西太志:Taishi Nishi
“ 新しい国:New Country ”
2021, Oct. 23 ( Sat. ) ー Nov. 13 ( Sat. )
西太志はまるでショートムービーの1場面を切り取ったかのような物語性の強い絵画を描いて来ました。その内容は少年の夢や暴力性を仄めかすかのような危うさを秘めながら、どこかユーモラスで懐かしさを感じさせるものです。色彩を用いることもありますが、モノクロームを主体とした画面は、ストロークを多用した、どちらかというとドローイング性の強い画面になっています。私どもとしましては、どこかレイモンド・ペティボンやケントーリッジのドローイング作品の持つ不安や不条理といった趣を、西の作品にも感じてしまします。それは西の創作の根底に、スペイン激動の時代をシニカルに、またありのままに表現したゴヤの影響があるからでしょう。西の絵画を満たすストロークは、ドローイングが持つ即興性に繋がり、彼の感情をストレートに表現することに役立っているのです。
順調に制作を続けていた西ですが、昨年来の感染症の猛威は私たち、そして西の心境にも影響を与えました。圧倒的なスピードで全世界を覆い尽くし、私達が経験したことのない物理的及び精神的な分断をもたらしたこの感染症。その影響下に多くのアーティストは創作を重ねています。それがどの様なものなのか、今後私たちはその内容を見極めてゆくのです。この度の西太志の個展にもそのことが言えます。展覧会タイトル「新しい国」とは、西がその目と肌で、心で見て感じた世界なのでしょう。マスクを被った少年の、少しだけ垣間見える目元と口元。その少しの情報の中から、私たちは西の希望と創造の糧を導き出せるのか。彼の表現する「新しい国」の行く末を、期待を持ってご覧頂けたらと思っております。よろしくお願い致します。